母校、慶應義塾大学への期待

医学部、理工学部、薬学部 そして歯学部と理系だけをとっても、押しも押されぬ総合大学になる慶應義塾。

そうなると、異分野の知恵や手法が素晴らしい発見や技術開発に役にたつことが多いので、異分野交流の仕組みを上手につくると、世界でも例を見ない技術開発拠点大学になるポテンシャルがある。

さて、どうするか?

先ずは異分野融合で素晴らしい成果を出せるテーマを見つけることが第一。

それには、「ここが突破できればすごいことが起きる」というテーマをこれら四学部から出し合うことだろう。

自分の専門分野ではできないと諦めていたが、ひょっとして突破できたら、大げさに言って天地がひっくり返るようなテーマが、二つ、三つ出てくると面白くなる。

この指止まれで、天地をひっくり返す研究グループができたとしよう。研究資金は勿論国や企業からの資金調達が考えられるが、慶應義塾らしい塾員の協力を得た方法もあり得ると思う。

一つベンチャー企業がこのような仕組みから生まれれば、次々に出てくるだろう。最初は小さくてもよい。数が揃えば二塁打も、三塁打も出てくるし、やがて突然ホームランも打てるだろう。成功すれば、企業利益から次のベンチャー企業立ちあげ基金を調達できる。

慶應義塾には社中協力する精神がある。えてして、研究者は自分だけのアイディアで勝負したがる。三人寄れば文殊の知恵、十人集まれば千手観音の知恵。慶應義塾に期待する。

毎年、秋になると光ファイバーケーブルで大発明をした理工学部の教授を思う。

石英で出来た極細の光ファイバーケーブルが遠距離をつなぎ、それが一つのビルディングに繋がれると、そこからはフレキシブルな高分子光ファイバーケーブルが電子計算機へと光情報を繋ぐ。

そのケーブルの中心から外側に向って光屈折率が少しずつ変っていく構造になっている。その結果、パルス状で入ってくる光信号がずっとパルス状を維持できる。これは大発明であった。

この技術は一人の高分子工学者が米国ベル研に留学して気が付いたものである。上記のように、異分野融合の素地ができれば、もっともっと沢山の素晴らしい技術のブレークスルーを期待する‘おいしい’分野が俎上にのぼり、ほぼ絶望視されていた厚い壁に、慶応魂がドリルで穴を開けるだろう。

そう夢見るのは、私だけではないだろう。

 まずは、こういう夢が実現するような、仕組みを慶應義塾大学に是非作って欲しいものである。

大和三田会 新田義孝(工学部昭和45年修士修了)